小幌駅その2 行けぬなら 黙って見てろよ 小幌駅

 (http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20130928の続き)
 「しょぼい・・・」事前に解っていた事とは云え、当然の事とは云え、初めて「車中から」「おまけにかぶりつきで」「意識して」みた室蘭本線小幌駅長万部方面ホーム、車窓の向こう長いトンネルの闇が途切れる辺りなにやら申し訳程度に線路境界ギリギリにせり出す金物とも石ともつかぬ土気色の鈍た構造物の姿が見えた時反射的に現れた私の感想です。「あそこに降りよと云うのか・・・」先の嘲笑に似た感情を押し出し続けて表出した感情とは一転して恐懼に近い感情、もしかして今私は取り返しのつかないことをしようとしているのかもしれない。

 何れにせよ先ずはこの音に聞く難所礼文華をゆっくり送ってくれた車両に感謝の意を表すため下車後速やかに地に降りたって送らねばなるまい

 などとこの時思ったかどうかは定かではありませんが気付いたら眼前高く視界を遮る気動車の姿、遠目から見れば小幌駅の駅のホームに負けず劣らずしょぼい外観のキハ150もこのように拝めば全鋼性古豪車両に負けず劣らずの迫力。しかし感謝を忘れるな。この車両だからこそあれだけ良好なかぶりつき眺望が得られたことを

 イヤ、感謝されるのはあんたのほうですやん。室蘭線屈指の閑散区間の空気輸送を少しでも緩和したあんた。

 などと無駄な考えを狭い視野の中で逡巡させているバカ客をこの心細い駅に置いて再び空気輸送と化したJR北の切り札的気動車は乾いた轟音を立てて隧道穿かれた峠に挑戦すべくトンネルへと消えていったのでした「おたっしゃで〜 また会う日まで〜」

 「もう会うことはないでしょう・・・」ありきたりな恐怖小説ならば主人公の耳にこんな台詞でも放り込んでおいて後の伏線とすべく盛り上げていく所でしょうが、問題は本来聞こえるはずの声言葉、当方小幌駅を降りたに時ワンマン運転手から「ありがとうございました」の声が聞こえなかったこと

 さすがに初めての小幌駅、興奮のあまり耳に意識が渡らなかったのだ、と云うことにしておきましょう。何れにせよ駅のこの惨状(?)を見るに辺りこの駅で降りようという明らかに釣り人っぽくない軽装の客に対しては警告の意味も込めてこのように声をかけるべきだ「本当にいいんですか?」万一この声に客が我に返り己の身の程知らずな行為に気付き恐れ小幌駅降車を思い直した時、晴れて豊浦長万部間の空気輸送を免れることが出来るのだ。無事長万部に到着した賢客は冷静さを取り戻した自分へのご褒美にかにめしか折り詰めそばを買ってあげよう。どーせ次の列車までクソ待たされるんだから。

 えーっと、なんのお話でしたっけ? そうそう、要は「運転手は客に声かけるのも良いがその前にきちんと帽子を被れ」

 さて、そんな「見てる人なんか誰もいないであろう時間帯の礼文長万部駅間とか浦幌音別駅間とか湧別中湧別駅間でもきちんと服務規程を守らねばいけないか」という問題は置いておいて、一番の問題はこの日例の函館線内貨物列車脱線事故の直後で当該区間通過長距離列車全て運休、当然の如く小幌駅通過列車なし、結果通過時の駅構内(トンネル間)ものすごい空気圧突出と云う孤立感と並ぶ小幌駅名物であるこの現象が体験できないと云うこと

 残念ながらその場にいないと体験できない当該現象、ただその現象を間接的に想像できる副次物が

 それは同時に起こる現象である「トンネル内外の空気圧差による通過時のトンネル内排煙一斉放出」により煤けた構内構造物、特に顕著なのが元々真っ白な駅名標

 雨ざらしにもかかわらずこの黒さは驚異的

 とにかくこの現象かなりのものらしく、通過の放送が入った直後「ドン!」という体感と共にトンネル内壁を押し出されてきた或いは引っ張り出されてきた空気による衝撃で場合によっては小幌駅探索のかなりの障害となると云うこと。

 この時の事故が無く結果そのまま絶えることなくこの現象が小幌駅で続けて起きていたなら今頃は「壁ドン」と云う言葉がこちらのことを指していたであろう想像に難くない。

 いずれにせよ各SNSに漂泊するハナクソ並の意味すら持たない言葉の一つ一つにも影響を及ぼしてしまうのだからJR北海道さん、お願いだからがんばって下さい。これは真摯な願いです。


 と言うワケで人の殆どいない駅には不釣り合いなくらい立派な*1構内踏切及び通過時放送、「人がいない」故に立派な意味を持つこと、そのために保守に万全をかけなければいけないこと、にもかかわらずこんなワケのわかんない立地にある駅であること、J北は一刻も早くこの駅を潰したくてしようがないにちがいありません

 その資本家の論理に対して結果的には静かな牽制になっていると私が常々感じる駅ノート*2小幌駅にもあります。そもそも自身が常時利用するに全く向かない駅をこよなく愛するという行為は偏愛に類する行為で駅本来の機能を愛する身としては著しく歪と言わざるを得ないのですが、これも現代の駅の守り方、役割かなと。

 その意味で日々駅ノート保守のために努力されている管理人さんの偏愛には最大限の尊敬と賛辞を送りたい。*3

 だからノートとかSNSとかに「秘境駅を期待してたのに人が多くてがっかり」とか書いてる御仁、間接的に廃駅への希望を述べてどーする。ホントにそれを望むなら次来る前に駅は無くなる*4

 小幌駅ノート管理記録・・・http://lavenderblue.jp/chair/kewporuoi/ 国道から小幌駅までのルート紹介及び駅周辺の観光案内(!)『礼文華観光案内』の作者さんでもあるそうです。
 では最後に、へたっぴ写真にお付き合いいただけたお礼にちょっと役に立つ情報。「駅至近で携帯アンテナ(docomo)立ちやすい場所」


(↓ちょっと小高くなってて駅が下の方の視界に入る)

 「長万部方面ホーム側、構内踏切裏側(海側、線路と反対側)にある建物(踏切・放送管理小屋?)の更に裏側(海側)にある建物跡のコンクリ土台の辺り」私はこの時先々日くらいの仕事の報告を急に求められて(そいつが単に聞いてなかった)急遽アンテナ感度の良い所を探してメール送らされた。今でも腹立つあのハゲ。一年ほど経っているのでその後もっと改善されたかもしれません。

 ・・・(つづく)次回は駅周辺のその他見所を

*1:立派か?

*2:東日本には毛ほどにも通じやしねえけどな

*3:後日冬季に北斗星乗車時通過した時に大雪に埋もれてるホームからこの管理人さんらしき方が手を振ってるのを見た時には目の前で起きてることを理解できなくて放心状態になりましたが

*4:追記 小幌駅くらいビッグネーム(?)になるとさすがにJ北も放置しきれなくなったのか先日(26年夏)小幌駅のメンテを行うJ北の情報がツイッターよりもたらされました。J北がんばれ。そして「フリーきっぷでなくきちんと当該運賃を買って乗る」乗客もっとがんばれ。