『ラスト・キング・オブ・スコットランド』

アントニオ猪木とデスマッチがしたい」などと言いたれた国家元首なんてこの人くらいのもんでしょう。ウガンダの元大統領、イディ・アミン。政権奪取の後、権力維持と猜疑心から国中を狂気に巻き込んでいく話。ひょんな事から大統領の側近になったスコットランド出身で医師の白人青年を通して語られる。
まあ、主人公二人(アミン・白人青年ニコラス・ギャリガン)はどちらも理想と野望だけを頼りとして権力に上り詰めるも、その心の内は成長してない子供であって、当然子供に国家権力という途方もなく強大な大人のオモチャを与えればどうなっていくのか、という流れで話は進む。「ユーモアに富む頼りがいのある大統領」がだんだんと狂人の如くの容貌に陥っていく様、また瞬時に変化する「大統領」「狂人」をアミン役のフォレスト・ウィテカーが上手く演じているというのがすべてでしょうか。冒頭の「猪木〜」のエピソードもさりなん、と思わせる。話の中にいくつも鏤められた「見捨てられた暗黒大陸」アフリカの当時の、そして現在も変わらぬ現実は、この手の映画に欠かせないメッセージでその意味でありふれているとはいえ、毎回の事ながらその不条理にやるせなくなる。
後半顕著になる「アミンの狂気」を強調するための前半のテンポの速い話の展開なのだろうが、いつもながら、メジャー映画にありがちな筋の速さに慣れない私には却って辛い。
わかりやすく、観て為になる映画とは思うよ。というか私の観る映画ってほとんどそんなんだ。