花の折檻

 これは拷問だろう。狭い、本当に狭い書院に一人座らせられる。壁と襖、見渡す限り等間隔に並んだ草花。
 「我関せず。ただ黙して座しているがよい。他におまえのできることはこの草花を眺めるだけだ。」眺めるだけではつまらない、せめてその数を数えよう。数えるだけではつまらない、せめて草花の名を当ててみよう。あれは・・・あの花は・・・。
 やがて、自分と外界とを隔てる薄い膜を通り越して草花が「置かれて」いくのを感じてくる。あれは・・・あの花は・・・。
 いつか土臭い芳香まで漂う有様。想いは草花も自らの一部の如く。それが錯覚であることに気付かず、この書院から離れることこそ何よりも耐え難き苦痛。どうすれば、この場から離れることを免れることができようか。
 伊藤若冲「花丸図」を前にして浮かんだ妄想。・・・ここにあるのはよくできた複製だが・・・。

 『金刀比羅宮 書院の美』を観に行く際、襖絵の前では少し屈んだ目線で観てみると面白いですよ。