『変態村』

 季節感感じられない閉め切った部屋、風の音さえ聞こえなければ春と何ら変わらない日溜まりの中でうとうとしていると、何故かこの映画のワンシーンが夢に出る。昨夜、なんだか似たようなシーンを見た気がしたので恐らくはその続きなのだろう、ゴルゴダの丘よろしく十字架に架けられた男がピクピク痙攣している・・・「十字架のシーン」はこの映画のクライマックスだが、よく考えると夢に出たシーンは正しくは存在しない。正しく映画で十字架が登場するのは「主人公マルクが納屋の中で十字架に打ち付けられて泣き叫んでいるシーン」と「逃げ回るマルクが霧の中、既に磔刑にされた『グロリア』を仰ぎ見る」シーンのみ・・・だったと思う。
 観たのはもう2年も前のこと、そんな前に観た映画を憶えているのだから、面白かったのかなぁ?。 私は「宿屋のキチガイ主人に焚き付けられて、眠っていた狂気に火を点けられた村人達が、無言で踊り始める飲み屋のシーン」が好き。あの、オルガンの伴奏を凌駕するほどにだんだんと大きくなっていく、村人達のステップを踏む音、既に場を支配するのは狂気、にもかかわらず村人達の目に映るのは何故か「狂気」より「無気力」、村人それぞれに狂気が宿るのではなく、別の場所にある共通の「狂気」と言える何かに操られているようなあのシーン、最高。
 この作品、冒頭、霧の中に紛れ込むことが正気と狂気の境となす重要な転換点。決して作品全体を霧が覆っているわけでないのだが、このシーンに代表される私にとっての印象的な部分はすべて霧、と言うかセピア色と言うには濁り過ぎている色の半透明の覆いが被さっている。私の頭の中で勝手にそんなフィルター越し再現されてしまうことで少しずつ不確かな映像に熟成された結果波長が同調、今頃になって睡眠時に顕在化することとなったのかなぁ?