その二十三 渋谷区道玄坂 『千代田稲荷神社・中川稲荷神社』

sans-tetes2008-03-14

 迷うことを目的に、道玄坂と文化村通りに挟まれた、表通りに林立するテナントビルの丁度日陰側をふらふら歩く。よくわからない雑居ビル、どんな人が住んでいるのやら集合住宅、風俗の看板、ラブホテル。入り組んだ場所にこれらがある程度の規則性をもって混立。狭く、急な坂が連続する地面と乱立するビルの合間から継ぎ接ぎのように覗く空、視覚の処理に困惑した脳髄が容易に重力を見失い、まかり間違えば非常階段の裏側を逆さまに下り登って地底深くに落ち込んでいきそうな、エッシャーの騙し絵を体感する裏通り。
 だからラブホ街の一角に、突然御稲荷様の提灯が現れても、そんなに違和感は起こさない。というか違和感が麻痺したまま「あぁありがたいなぁ」とか思いながらお賽銭あげて拍手してお参りしてしまう。これは空間に化かされているのかそれともお狐さんに化かされているのか? 何れにせよ、あなたがラブホ街で出会った稲荷神社は幻でも何でもなく昼も夜もいつの季節も実際にそこに鎮座する今もなお地元民の崇敬を集めるお社ですよ。通りがかり、物珍しさにカメラに収めていくだけでなく手を合わせてお参りすれば、なんか良いことありますよ、たぶん。