『いつか眠りにつく前に』

 おそらく、恋愛映画である。死の床についた母の口から発せられる見知らぬ人達の名前、それと母が呟く「過ち」。生と死、夢と現、その境界定かならなん虚実の間に、母の若き日の「過ち」が明かされ、同時に残される者達への明日への希望が導き出される。
 クールを装い、世を儚い、孤独に人を避けて生きるより、自ら為した人生に目を背けず、素直に受け入れ、肯定してこそ自らが過ちと信じてやまない「行い」の意味を理解する。確かにあなたは幸せでしたね。広い家、24時間対応の看護婦と手厚い在宅ホスピスケア、目を閉じる際傍らには自分を愛してやまない娘達。誰もが「納得」する死の描き方は、まるで古き良きアメリカの安らかな死を体現するよう。我が国では決して望めない「死出の舞台」を見せつけられて、感動とは別にこのような穿った考えをせざるを得ない思考を作り出す私の人生に、恐らくは安らかな死の訪れることの無いであろうこと、良くわからせてくれる映画であった。