その二十四 新宿区西新宿 『成子坂子育地蔵尊』

sans-tetes2008-03-15

 新宿駅から中野坂上方面、東京医科大病院を少し過ぎた交差点、ビルの影に隠れてお堂と共にひっそりとお立ちになっている。西新宿の、既に開発が済んだ側、その出立ちはともかくとして、「ひっそり」というのは厳密には正しくないのかもしれない。ビルの谷間、排気ガスの排音、この場所にお地蔵堂があるというだけで諸人に放っておかれていない証拠、現に私がこのお堂を見つけた際、先客の、お孫さん連れのお婆さんの姿、お堂に多く貼られた千社札、堂内に飾られた花と堪えぬ香の煙、何よりも物語る。
 カーチス・ルメイの指示の元、この地も多く惨禍に見舞われ、このお地蔵も例に漏れず被災、今お堂にあるのは何代目かのお姿とのこと。確かに質感は新しいが、大分煤けて見える(恐らくは排気ガスによる)お地蔵のお顔が、年を経ずとも人々の思いが染み付いているようで、却って灼かに見える。この地には今、周囲の原住民がほぼ一掃されて、新たに移民の入るための箱が建てられている。移民は恐らく、いわゆる「若い」層、講の断絶は免れ得ないとはいえ、それこそこの地蔵が得意とする霊験に一番恩恵を被る層、高い箱の上から都会の空など見ても得るモノなどほとんどあろうや、この場所に気付くのが、千社札目的の好事家だけということがないよう、この地蔵堂の意味に気付いてあげてくださいね。