『QUEEN HOUSTON 1977〜NEWS OF WORLD USA TOUR〜』

 初恋の人が想い出の中同様、いつまでも色褪せず、いつまでも美しい・・・というのはやはり映画だけのお話。
 最もここで語る「初恋の人」とは、嘗てVHS版『QUEEN RARE LIVE』にて、ダイヤ柄のバレー様ステージ衣装を着てグランドピアノに向かい「My Melancholy Blues」を熱唱するフレディ・マーキュリーとクィーンの演奏で、このクオリティの高さはその選曲の「レア」さと相俟ってまさしく珠玉、衝撃を受けるに十分な内容。以来この演奏時の「全演奏」が収録されているブート版を求めて北新宿を当て所もなく彷徨ったモノである。
 どうも、北新宿系の仕入れルートではこのステージの全模様を収録するソフトは流通していないらしく、私の彷徨いはそのまま徒労と終わり時は過ぎた。
 ある日、地元の中古チェーン店で何気なく手にした「妙な」表紙のブート版、初めはCDとばかり思っていたモノの、視聴の段階でDVDと発覚、と同時に長年探し求めながらも中断せざるを得なかった、アノステージの様子が思い浮かぶ。やっと出会うことができたのだ。
 北新宿なら常識の試写がこの店ではできない。当然「この程度の」画像の乱れはブート版を求める輩にとっては大したことのない、許容範囲ではある。だがしかし・・・。
 言わせてくれ。公式版としてリリースすることを前提に撮影された元々の映像が、なんかの事情でお蔵入り、大体からしてその時点で許せないことなのに、その後公式の継ぎ接ぎ版とかブート流出とかで中途半端に内容を見せるから私のような感染者を量産する。本当に産業ロックの親玉EMIのやることは・・・。
 まあ、映像はさておき、音声については飛んでる部分もほぼなく、ずっと観ていると確実に目の悪くなるであろうレベルの映像を差し引いても、やはり佳作と言える出来映え。元々のステージが素晴らしいのだから当たり前だが。
 意外に思ったのは、本来フレディの「お休み」タイムに当てられているイメージが強いロジャーがリードボーカルを取る「I`m In Love With My Car」にフレディがコーラスを合わせている! スタジオ録音並の二人のボーカルが聴けるのはなかなかない(と思う。よう知らんけど)。
 ということで、映像化を意識してかフレディの気合いに並々ならぬモノを感じる。声と気合いのテンションはほぼ全ステージに於いて保たれ、また後期映像が多いクィーンのステージ映像ではなかなかお目にかかれない歌のバリエーション、私は何気にフレディがステージでピアノを弾きながら歌う曲が好きで、その場面にお目にかかれる「メドレー」(Death On Two Legs→Killer Queen→Good Old Fashioned Lover Boy→I`m In Love With My Car)が好き。他に2カ所ほど、フレディのピアノで繋ぐとこ(The Millionaire Waltz→You` My Best Friendsと`39→My Melancholy Blues→White Man→The Prophet`s Song)がすごく良いんです。メドレーといえば「We Are The Champions」後の「ロックメドレー(Sheer Heart Attack→Jailhouse Rock)」、これから「God Save The Queen」に繋ぐラストはこの頃まで限定という珍しさ、というだけでなく純粋に好き。
 というように、画像悪かろうが何だろうがとにかくどんな状況であろうとクィーンの演奏に酔いしれてしまう、初恋に毒された少年を騙すに充分な内容。そして少年は、より完璧な初恋を求めて更に泥沼のブート市場の中を当て所なく彷徨う。聞いておられますか?EMI殿。