その三十五 鶴ヶ島市下新田 『羽折稲荷神社』

sans-tetes2008-03-26

 お地蔵様を満喫したので、もう良いかな、とバイクに戻ろうとすると、地蔵堂とバイクを止めてる自動精米機の駐車場の間、行き止まりとばかりに思っていた未舗装の道の先、その時初めて道が先に続き、その向こうに赤い鳥居があることに気が付く。最初は地蔵堂に気を取られていたのでただ単に気が付かなかっただけなのであろうが、私にとってその存在を完全に消却させていた道の出現は大変唐突に感じ驚く。その時の感想をを例えると「なんかの条件をクリアしたので今まで塞がっていた場所に先に通じる道が出現するドラクエのダンジョン」みたいな感じ。あ、私のドラクエの知識は7くらいまでなのであしからず。
 赤い鳥居の主はお稲荷さんでした。村の集会所として今でもしっかり現役、脇には集会場と児童公園。集会所ではなにやら会合が行われている様子。地域の人々が多く集あつまる中、私みたいな異物が紛れ込んでウロウロと怪しい動きをしているとリンチにあったりするんだろうな、アメリカでは。
 お参り済んで、神社の傍らに腰掛けぼーっと境内を眺める。いい天気だな。ちょっと傾きかけたお日様が参道の所々植えられた木々を避けるように狛狐を照らす。最近作られた新しいものらしい白い質感で、「かわいい」系でなく「かっこいい」系のキツめの面相。この神社の鈴鐘は社の規模の割にやたら多い。
 そうこうする内に集会が終わった様子、集会所の戸を開ける音とがやがやと静寂を破るざわめき、あやばい、リンチされるかも、とまではいかないまでもこのような時に何人かが投げかけるであろう異物に対する怪訝な眼差し、面倒くさいので社の裏に隠れることに。よく考えれば社の裏にいるところ見つかればその怪しさやまさしくリンチ級で、さっさと後ろを振り向かずに立ち去ればよかったのだが、このような避難方法を取らせたのはこれこそまさしく縁だったのだろう。
 社の裏手には何本かの木々、その一本の傍らに地蔵が一体。神社における一見異物的な聖域に突如として遭遇するようで少し狼狽。瞬時に、「ああ、なるほど」納得、そして感激。路沿いのお地蔵様はこちらへの誘いだったのですね。現在ではあまりない、このような不思議な空間との邂逅、いい雰囲気だなぁ〜。
 この場所は苦労して条件をクリアして行き着いたダンジョンのゴールであった。そして苦労するに値する報酬が十分に得られるダンジョンであった。