その五十七 長野県上高井郡小布施町小布施中町 『皇太神社内 桜花殿』

sans-tetes2008-05-15

 もう本当に疲れたので、シャレにならないほど疲れていたし、明日も予定あるし、雨が冷たいし・・・。だからこのお社はお参りだけして済まそうかと思っていたんですよ。取材結構疲れるし。
 ところが境内に一歩足を踏み入れびっくり。まず広い。広い境内にいくつもお社、そのどれもが立派なこと、これはおかしい。どれが本社か解らない所なんかまるで伊勢神宮のような。ちなみに一番みすぼらしく見えたのが本社『皇太神社本殿』、なぜ?
 神様を奉った拝殿だけで五社。それぞれ『八坂秋葉神社』『金比羅神社』『皇太神社本殿』『桜花殿』、まずどちらに参拝すればよいのか著しく目移り。当然最初は本社なのだが、本社よりやや鳥居側にある『金比羅神社』の屋根に何故か狛犬、しかもこれが逆立ちして思いっきり挑発する。で、気を抜くと本社をすっ飛ばして浮気しそうになる。くそぅ、かわいすぎるぞ。
 狛犬だけでなく、何故か境内動物多し(狛犬が動物か否かはまあ置いといて)。あまり目立たないのだが、少し奥まった所に小さめのお宮が建っていて中には「馬」がこちらをじっと睨む。知らないとオドロク。「神馬」ということで、生きた馬を奉納するのが面倒くさいので木彫りのリアリズム溢れるお馬を奉納、歴とした神様の乗り物である。種々バラエティー富んだ境内の動物達、トリを飾るに相応しい極めつけは「海の生き物達」・・・。ちょっと詳しく説明すると境内、鳥居が東西二カ所にありそれを結ぶように参道が走る。社、宮は全てその参道の北側に鎮座し、参道の南側は子供の遊具場となっていていわば境内は参道によって南北に分断されている。その遊具場に、六体の生き物を象ったベンチ。東から「イルカ」と、これはまあ素材としてよくありがち。イルカの目に全く気力を感じさせず死んだも同然の表情をしているのはとりあえずは置いておこう。お次は「カニ」がイルカを一瞥もすることなく北を向く。あまりこういう形でお見かけしないが、まあ無理はないとは思う。坐りやすいように頭部が平らにして機能重視、人に優しい造りである。次は「タコ?」いや、どうやら「クラゲ」らしい。目鼻口なし表情なくただ立っている。これも機能美を重視するが故の無駄のない姿。少し間をおいて次は「フグ」、たぶん。フグに罪はない。罪はないのだが、歳月による劣化を受けてなんて寂しそうな顔なんだ。お次は「ホタテガイ」。表情のし。ここまで来ればもう何が来ても驚かん。最後に「ヤドカリ」。ヤドカリ?デフォルメされた目・口・ハサミが却ってグロイ。何を儚んでか全ての仲間(?)からそっぽを向いて佇む。彼ら一様海のモノ。一番近い海まで約40キロ。う〜ん、わからん。わからんが神域から眺めるこの風景の、いやシュールだ。
 この神社、思うにあちこちの神社を集めて一所に集めた、その際正しく「摂社・末社」の形態を取らす全ての神を等しくそのままに奉ったか、或いは元々この地にあった古社に国家神道を奉祭するに際して看板を掛け替えたか。いずれにせよ今はどれも等しく崇敬を集める様子で、年に一度盛大な達磨市が営まれる等種々行事も行われているらしい。行きずりのこの神社、正しく由来の解ろうはずはないものの、一番西側に建てられた「桜花殿」の由来は恐らく「国家のエゴ」に由来しようこと薄々感じる。唾棄すべき国家神道の残影に、普段ならば間違いなく複雑な思いを持って手を合わせるのであろうが、この日ばかりは異なり、また丁度桜の散る季節とも相俟って、千社札はこちらに奉納させていただく。雨は尚も止まず、流石にこれ以上の疲労を重ねるのを避けるため、神社を後にした。