その六十二 長野市松代町豊栄 『皆神神社内 天地カゴメ之宮』

sans-tetes2008-06-09

 荘厳なお社に最早静寂が主役となった境内、多少の感性を持つ者なら誰しも、この場に類い希な神聖を感じる。ああよかったよかった・・・。
 ん、ちょっと待て。登頂の最中にしつこいぐらいに立っていた「ピラミッド祭り」の幟はなんだったんだ? 心配御無用。シャレの通ずる寛容な神は、その疑問に答えるべくちゃんとこの地に偉大なツッコミ所を用意してくれている。
 「天地カゴメ之宮建立の由来・・・」『天地カゴメ之宮』との名を冠する小さな社が皆神神社の境内にある。社は他の摂末社様の小さいモノだが、その周囲に文頭の書き出しで始まる由来に「カゴメ之宮」の文字が刻まれ灯籠や狛犬。「ただの摂末社ではない」ことは十分感じさせる。件の碑には十六葉菊の上にダビデの星をあしらったおかしな紋と共にこの社の由来が語られる。・・・要は「諏訪の神に啓示を受けて更に世界中の(アブラハムの宗教を含む)全ての神仏の啓示を受けて、その世界中の神の集まる皆神山に社を建てたので皆さんありがたく拝みなさい」という内容。なんという落とし穴、ここに来て電波の啓示を受けるとは思わなかった。
 しかしわからない。『皆神神社』自体は由緒正しき神社であること間違いないのだが、この由緒ある神域にこんだけ電波な碑始め社、その他おっ建てることの出来る「天地カゴメ之宮斎仕」とは何者だろうか? (追記、2ちゃんのオカ板でこの「斎仕」の孫と名乗る書き込み発見、真意は不明。碑には「斎仕」の名前が書いてあったけどここでは触れません。なんか怖いし。どーつっこんで良いのやらわかりません)
 で、この社の存在に気付いたとたん、「アラ不思議」。先程まで凛とした均質的空気を神聖の依代としてしていたはずの境内、その境内中に実は無数の落とし穴。己の不明を嘲笑うかの如き、場の空気を著しく混沌に陥れる構造物の数々。「おへび大神!?」「うぎゃー出口王仁三郎の碑だよ」「何で聖地の周囲がゴルフ場やねん!」・・・なんか、あまりに寛容すぎる神社の主(宮司?)の気持ちが常人の理解を遙かに絶する。或いはよっぽど金に困っていたか・・・。
 それこそ魂が抜かれたかの如く、皆神神社の門を出る。せっかくだから神社の全容を別の位置からも見てみようと思い立ち、本来徒歩での移動には縁のあろうはずのない駐車場を訪れると、・・・。本当にこの神社、休む暇を与えない。駐車場に大きな看板。そこには私にはとうてい理解できない理論満載の「皆神山ピラミッド」御由緒の説明書き。どこまで許すつもりなんだ! 何度も読んだが俺にはわかんね。
 駐車場の先、更に斜面を登った先に小さな社が見える。出来れば行ってみたいのだが、間にゴルフ場がたちふさがるため近付くことが出来ない。駐車場とゴルフ場の間は広い間隔で木が植えられる雑木林になっていて、その辺りにも「空解教之御柱ハッピーボール」や「世界最古皆神山ピラミット塔」碑等の構造物。塔ねぇし。ゴルフ場側とは別の方向、急に傾斜がきつくなり崖の様になっていて、下界を望む。山麓の遅咲きの桜の花弁がそこからはらはらと下界にこぼれていく。
 この地に神社が出来る遙か昔より、何らかの神聖な地であったであろうこと、何故だか、不思議なことに、来てみるとよく解んです。だからこそもっと「勘の鋭い人」は更に何かを感じるのかもしれない。結果がこれ、太平洋戦争で日本軍が全滅した島みたいに、訪れる宗教者が供養塔やら地蔵やらばんばんおっ建ててるもんで、わけのわからん電波塔の様相に。みんな大マジメなんだけどこれがこれがまたユルすぎてすごく良い。
 というわけで初の「トンデモ系」神社への参拝でした。