その六十五 八王子市西寺方町 『琴平神社』

sans-tetes2008-06-13

 墓参りに行く。家から墓参りに行くには、秩父・多摩の峰々を越えて行かねばならい。暖かくなっての山越えで、初めて知る、ヘルメットにばんばん突っ込む細かい虫。山道を抜けると忽ち視界が悪くなる。何より、墓参り行くのにむやみに殺生してはイケナイ。
 とりあえずメットを拭いたくて、「右折ホームセンター○○」の看板に素直に従い曲がる。けどいくら行けどもそんなモンねぇ、ので仕方なく引き返し、行きに通りがかり目を付けて置いた神社にお参りする、ここは八王子市内の陣馬街道沿い。
 里山の急な斜面を登り、近くに海はないけど「琴平神社」。まあ、ワニさんも水辺だけでなく崖っぷちにも住みたいのでしょう。本社は山の中腹にひっそりと鎮座。あまり人の来ている様子はない。境内の西側、東を向いた本社に。境内の北側、何故か切り立った崖の上、何故か本社より高い位置に摂末社らしき一連の小さい社。更にどういうワケかどの社も崖ぎりぎりに建てられたいるので、近くに寄ってお参りできないどころか、大雨でも降ったら崖が崩れて社が転落してしまいそうな位置。ぞんざいと言えばぞんざいな扱いなのだが、実は下から見るとどっかのバルコニーで演説する革命家みたいで見栄えがよい。
 平日、街道を走る車はほとんど無く、この場所には何も聞こえない。ちらほら奉納された千社札、さすがに地元の住所が多い。他に奉納(?)スズメバチの巣。他に「御嶽山 大口眞神」のお札。御嶽山の眷属は、今は絶えて久しい誇り高きヤマイヌ(ニホンオオカミ)様。大口眞神はそのヤマイヌを奉る御嶽山内の摂社。恐らくは参拝の記念なのだろうが、何故ワニの神社にわざわざ他の動物のお札を張るのかよく解らない。お札に描かれた、黒色の、精悍な体躯にジッと遠くを睨むヤマイヌの姿が、涜神ながらバスカヴィル家の犬のイメージを思い浮かべる。もっとも、私にとっての「バスカヴィル家の犬」のイメージは、いしいひさいちの『コミカルミステリーツアー』の単行本表紙に描かれた、「八ッ墓村の田治見要蔵の格好をしてホームズとワトスンに襲いかかる犬」になってしまっているので最早コメディにしかならず、涜シャーロキアンも良いところである。
 こんぴらさんはワニのお姿。新たにヤマイヌ様を同居させるワニ様は、いかな姿でこの場に鎮座されるや?