「見えないアジアを語る〜国境とタブーを越える冒険者たち〜」於Asagaya/Loft A

 『見えないアジアを歩く』という本の出版記念イベント。
 イラクミャンマーチェチェンアチェスリランカといずれもアジアエリアにおける名うての紛争地域に、外務省の勧告を無視して時には違法越境という危険を冒すほど惚れ込んだいろんな意味での旅のプロ達が紹介する「まず一般の人々が旅行することのないであろう」各地のガイドブック。
 なんでまた・・・という内容は本を読めば解ることなのでここでは触れない。イベントで語られた場所は我が国の外務省がご丁寧に「俺は危険て言ったからね。だからそれを無視して入ったって責任は持てないよ」ってわざわざ指定している地域に入るためのテクニック・・・NGOに化けるのは基本として、にわか歌手になったりわざわざ外国でビザを取ったり、中には二重国籍を取得して2種類のパスポートを使い分けたり、某国が本当に行っている「政府公認の偽パスポート」を購入したりとなかなかの荒技も披露してくれた。この本とイベントの目的は別に率先して危険を冒せといってるわけではなく「誰も知らないことを自分の目で見て確かめて、それを人に伝える」ことの大切さを奨励することに他ならない。その助けとして本書があるのだが、実際にそれらの地域に潜入するための予備知識も記されていて、運が良ければこの本片手に本当に潜入できてしまうところがまたタチの悪い点ではある。出版元が、「また日本人が現地武装勢力に誘拐されたとき、この本片手に持ってる映像が流れたらどうしよう」とか心配していた。プラスワンとかでイベント主催する出版社はほとんどが弱小だから毎度の如く自虐ネタが出るんだよね。会場にはその「自己責任」衆の一部も遊びに来ていた。
 こんなユルイこと言ってるけど、執筆者はいずれも命懸けの修羅場をくぐり抜けて来た人々で、そう考えるととてつもなく重い本とイベントなんだな。そんなスゴイことを笑って語れるのはやっぱ人の見ないことを見ているという自負から来るモノなのだろうか。今時の新聞記者とか外務省のホームページなんかよりずっと信頼できそうな皆さんのお話でした。まあ、感化されてヤバイ場所に行く場合はくれぐれも気を付けて。還暦すぎたランボーなんて助けに来ないから。