『よど号ハイジャックと連合赤軍、帰国問題』 於ロフトプラスワン

 鈴木邦男さんが司会でゲストに映画監督の若松孝二さん、漫画家の山本直樹さん。例の如く鈴木さんの紹介「日本で一番リベラルな男(新著の帯より)」、私の頭が悪いのか、立ち位置のわかりにくさは笑うとこ状態。
 本題に入る前に、鈴木さんの他の専門でもある「プロレスのお話」に「命懸け」というリンクから「連合赤軍」を絡めて煽ったテレビ局作製の映像を流す。「かつて狂信的集団が全てそうであったように、UWFも内ゲバを繰り返し崩壊する」てなナレーションはに求めるのは「そーだったんですか!」、というよなツッコミではなくて、既に近代史の一部になりつつある一連の出来事のメディアによる扱い方が大分変わって来ているという好例と言うことで。
 さて、「坂東(國男)を捕まえるためにレバノンに百億も注ぎ込んでインフラ整備する日本政府、俺に十億くれれば説得して帰国させる」と豪語する若松監督、レバノン(?)・北朝鮮にいる元メンバー方の信頼を獲ているのは確かだろうが、こないだ行ってきた北朝鮮でちょこっと洗脳されたらしく、小泉以来の対北朝鮮外交についての我が国の敗北を、北朝鮮側の理由=戦略でもって説明≒擁護していた。要は、我が国の政府も国民もマスコミも大馬鹿野郎ということなのだが、「実際に自分の目でもって見てきた=実際に見てきた物でないと信じない」という監督の姿勢そのままのフィルターで語られる北朝鮮の姿、その全てに共感する事は出来ないものの、監督自身のモノの見方、考え方を表現しているようで面白い。
 バカついでに監督の口からの塩見孝也赤軍派議長及び植垣康博連合赤軍メンバーへの度重なる悪態、この理由が「革命家は不言実行、『世のため』と称する『活動家』は信用できない」「子分のしでかした不始末の責任を『獄中』を理由に回避する姿勢は情けない」等、「革命」とあんま関係ない、親分・子分としての組織経営の在り方とか、社会の恵まれた生活を背景に活動へと身を投じるエリート学生への欺瞞とか監督自身の極めて個人的な感情からなる非難であることが若松監督らしいというところなのだろうか。確かにそーいった資質でもって「代々木の焼鳥屋に行く際嫌がらせ兼ねて共産党中委の前に自転車路注する」とか「映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』制作する」ということが同系列にあるんだろうということに。
 肝心の「帰国問題」について若松監督が関わるのは、「老齢に差し掛かったメンバー達に生じた望郷の念」に対する義憤が第一の理由らしい。一方で、(メンバー達は相応の罪に服すことは認めているモノの)メンバーを迎える立場になる日本国、特にその司法=政府の腐れっぷりに対して手厳しく非難。その通りだ。こんな日本では安心して犯罪も犯せない、とかそういう意味ではない。「警官殺したければ想像の中で思う存分殺してそれを表現しろ」は若松監督の信条です。ところで、話しの中で若松監督、連合赤軍に限らず中核・革マル内ゲバを「警察のスパイによる扇動」と断言し、しばしば狡猾さを皮肉混じりに賞賛しているのに、自身がスパイ大国北朝鮮に行って来て・・・。全然関係ないが、監督が音頭を取って中核・革マルの手打ちを行おうとしたが結局ダメだったそうな。そもそものきっかけが「親分の仇討ち」だったり、手打ちのセッティング場所が熱海の旅館だったり、若松監督のせいなのかよくわからないがそれって・・・。
 さて、後半の質問タイムで席亭の平野悠さん(元左翼。現在でも「現役の左翼運動家」にたかられるらしい)が、「映画等で連合赤軍を見て『格好良い』と感想を漏らしたり、『プレカリアート』として雨宮処凛に同調する連中が方法として『我々が強い拒否反応を持ち、結果間違ったことと』教えてきた『革命』『暴力』を簡単に口にする」ことに違和感を感じるとの意見を述べられたことに、私の方が違和感。あなた達の世代は子供達に、そんなこと教えてないでしょ。むしろ黒歴史として封印したでしょ。私が生きていてしばしば遭遇するこーいった頭数を頼んだオートメーション的事なかれ思考停止状態から、団塊世代こそ元祖ゆとりなのではないかと思うのだが。これが単なる世代間の確執なのかどうかはよくわからない。その質問に対して山本直樹先生が「入り口は格好良くて良いじゃないですか。それから興味を持って調べていけば色々わかってくるわけですし。」と穏やかに回答。その通りだ。格好良いのがどこが悪い。もちろん、格好良いで終わってしまっては、口先だけの活動家と何ら変わりがない。「(映画の中で巻いていたように)実際の坂口弘はあんな格好良いマフラーの巻き方はしない」発言はウケた。
 若松監督から次回作の構想についてちょこっと。『芋虫』その他取って金貯めて、『山口二矢』を撮りたいとのこと。ついでに撮影で破壊して更地にした別荘跡地だれか買わない?だって。山本直樹先生はとにかく『レッド』を最後まで続けられるようにとのこと。最後にそれぞれからメッセージ。「勇気を持ちましょう。勇気がなければ最後まで黙っていましょう・・・若松監督」「皆さん将来はたくさん子供を作りましょう。そうすればそれだけで子供の数だけオルグできます・・・山本直樹先生」。まさしく両者の性格を。山本先生について賛同する方は『堀田』も買って応援してあげましょう。という訳で『レッド(2)』ではなく『堀田(3)』にサインしてもらう。こっちもどーなる?