その七十九 松戸市根本『不動堂』

sans-tetes2008-09-28

 昔この辺りに、(岩瀬陸橋のたもと)に『アーバンヒル』というテナントビルが建っていて、黒川紀章の設計だったとか、その近未来的な外見・迷路のような構造という前衛的な建築物が松戸という半端な都市に合わなかったせいかテナントが入らず、完成2年後にはサンリオの入っている一階を除いてほぼ廃墟状態だったとか、そのうちホームレスが水浴びしたりして噴水・通水設備に水を流さなくなったとか、オバケの噂が起ったりとか、この松戸の沈下を象徴するような建物を知ってる人は結構な松戸通です。「黒川紀章作の廃墟」ということで最近まで残っていればかなりの(一部の)スポットとなっていたかも知れない。
 さてこの日、バイクのパンクでも起きなければここらをふらふらすることなどなく、いざ実際にふらふらしなければいけなくなったその時、ふらふらしに行った先がアーバンヒル跡地だったのは(今はマンション)子供心にあのイメージはかなり強烈に残っているモノと見える。その近くにこんなイカしたお不動様が奉られているとは存じ上げず、この時ばかりはタイヤの不備とかつて住んでいたこの地と黒川紀章に感謝する。
 一階が飲み屋だか薬屋だかの集合住宅の隣の一角。狭い狭い三角形の敷地内に結構立派な木造のお堂と石灯籠もしっかりと。お不動様はお花と千羽鶴に囲まれて、赤々と燃える色つきの光背のに照らされてその威厳を崩さず。やっぱ偶像はいい。かっこええ。ここら一帯、市のええかげんな開発計画のせいで中途半端で手を入れられて現在建っているのは元々の地権者がバブルとか不況とかいろいろあった末に税金対策で建てられたと思われる集合住宅だらけ。街の景色として余り好ましいとは言えないが、お陰で昔からのこのお堂が生き残ってこうして今お参りできること、勝手に神秘を感じる。ええかげんな都市開発にも感謝。
 恐らくテリトリーが比較的近いと見えて武生が抜け目なく、お堂に余り千社札のないことを良いことにやたら目立つ場所を占拠。高いビル様の集合住宅だらけの中、このお堂のがあるお陰でこの場所だけ線路側の視界が開け、松戸駅の最端のホームが何とか見える。線路側の視界が開けて嬉しいのはテツくらいのもんで、一応夕方の時間帯、結構ひっきりなしに通る常磐線新京成電鉄の他にはこの日たまたま行われている松戸の祭りに向かうちょっと浮かれ気味の地元民達位しか見えない。浮かれていると言えばその線路の更に向こう、岩瀬の陸橋に沿ってソープランド角海老とラブホの看板がチカチカ光り始める。更にその向こうに里山があって市役所がそこに松戸市役所があるため、周りはあんまり造成されてない。松戸駅東口側は周りにはこういう余り造成されてない(或いは木々を上手に残す上手く造成されているのか?)里山が結構近くまで迫り、活気の消えた繁華街の光を飲み込むように存在する。そんな中にいつ見ても目立つ角海老、で、その向こうに松戸市役所。ホント何考えてんだな都市計画に、今や住民でもなんでもない私はただただ無責任に感心するばかり。アーバンヒルのあったころなら、不動堂の背景に線路と黒川紀章作の廃墟とソープの看板と市役所がちょこっと覗く、ちょっと前までここはこんなにカオス。
 それにしても、お不動様は格好いい。