『LOOK』

 自分の性的趣向の中に覗きへの興味が全く無い方は観ない方が無難、かも。かといって『めぞん一刻』に登場する四谷氏ばりに「好きなことは?」「のぞきに尽きます」と言い切れる人も観なくてもいい、かも。今作、撮影は全て店舗設置の監視カメラ等自動録画用のカメラで撮影されているが、その中で繰り広げられている出来事は全て演技である。ただ、冒頭に流される「アメリカでは全土で推定3000万台の監視カメラが設置され40億時間の撮影がされていてアメリカ人一人あたり一日に200以上撮影されていることになる」の字幕のお陰でこの映画内の出来事がまるで実際に起きた事であるかのように錯覚する。事実、私は前半位まで騙されていた。
 冒頭に紹介されるアメリカ国内に設置される監視カメラに付いてのデーターは事実だろう。主に犯罪抑止の目的で街頭に、店内に、校内に、トイレに、更衣室に、「ごく普通」に置かれるカメラの前で繰り広げられる出来事は当然犯罪行為ばかりではない。それこそ個人にとって何らエピソードとするに足りないような日常の出来事から、職場内の仕事ぶりや職場内の人間関係、それに個人の情事、これだけあちこちにカメラが設置された自由の国では日常的にこのような事が起きていること、さもありなんとさせる映像とドラマが延々と流される。この奇抜な撮影手法が映画の一番の見所だと思うが、その様な奇抜な手法によって伝わる常に「監視され」「記録され」る様子、更に彼らが無意識の内に「演じる」「世界一の自由」、これが存分に伝わってくるようで面白い。一方で、実際の犯罪抑止力として監視カメラが全然役に立ってない様子、逆に大活躍する様子、このカメラ達が実際に自分たちのプライバシーという高い代償に見合っているのか? とかいう皮肉もきっちり描写。私は元々街頭にまで監視カメラを設置することに大いに疑問を持っているので、以前より街中で、密室で、職場で、カメラがどこにあるのか、死角はどこなのか探すのは日常みたいなモンなのですが、この映画を観た機会に改めて周囲の監視カメラに注意してみることにはしてみますわ。それにしても近頃の連中は信用ならん。