拾遺 TUTAYA上野店

 久しぶりに上野をプラプラする。閉門間際の花園稲荷のお穴様に参る。松本英子先生の『荒呼吸』のお陰で今や(私の中では)全国区の勢いを反映してか、常とは異なる多くのお灯明。全ての灯明差しにロウソクが供えられているわけではないが、良い場所を押さえた絶妙なポジショニング。負けてはならじと私は数で圧倒。いつもほの暗く、窺いにくいお穴の奥がほんのり照らされる。しばらく隅にしゃがんで眺めていると母子の参拝者。邪魔にならぬよう更に隅に避けていると、熱心に手を合わせる母親をよそに「怖い怖い」言ってなかなか落ち着かない子供の方が、丁度目線の位置にうずくまっている変なおっさんに少し興味の様子、ニコニコしながら、でも遠巻き。君が大人になってもう一度ここに来たときに、たぶんこの様子はフラッシュバックのように思い出されるであろうぞ。他人の記憶入り込んだようで、まるでスタンド使いになったかのような妄想を抱きつつ、さっきから入り口の辺りをウロウロしだした神職さんの姿を合図にお穴様を後にする。
 上野上野・・・この日直接の用はなかったけど、なかったはずだけど何か重要な用があったような。そうだ、TUTAYA上野店が松本英子フェアでえらいこっちゃになってるとの噂、こら見に行かなあかんとけど場所知らないので、わざわざ上野駅挟んでほぼ対角線上にある上野警察署で場所聞いて向かう。途中通った「上野聚楽」とその一階ののれん街が閉められていた。遂に建て替えるとのこと。どうか、ろくでもない建物が建ちませんように、せめて西郷さんの下でピカピカ光る「聚楽」の文字のネオン看板が復元されますように。いつでも所々電球が切れてるとこまで再現しなくても良いですから。
 TUTAYA上野店到着。さて例の棚は・・・すぐ見つかる。確かに「すげぇ〜」。『荒呼吸』と『ウチのハナちゃん』と『プロジェクト松』が並ぶ隙間に松本さん直筆の色紙兼ポップ、も一つ小さい直筆ポップ、他は店員さん手作りの「松」の顔。圧巻はハナちゃん抱えた松本さんの全身像手作りポップ。これ、この棚がレジ前でなければ本と一緒に万引きされちゃうのではないか、心配したくなるほどの気合いの入れよう。ちなみに僕は、もう万引きとかしたらシャレじゃ済まない年齢なので、自制。
 「フェア」はしばらく続くだろうから、松本本が掲げられる下の棚はレジ前の最特等席だけあって平積み本の入れ替えは激しい様子。本日の平積み本は「大沢在昌」。松本本の下に大沢在昌? なんじゃこのカオスは。別に大沢先生が『堀切鱏』とかいう意欲作を発表したわけでもなんでもなく並んでるのはふつーに『ジョーカー』とか『新宿鮫』とかだった(ような気がした。よく見てないのでよう知らん)ので、偶然の組み合わせだと思うけど、他ではお目にかかれない組み合わせに激しく心動かされ、その神秘にあやかるべく千社札を奉納したい衝動に駆られたが、自制。恐るべし、TUTAYA上野店。
 これは絶対写真を撮りたい。けどレジの真ん前でシャッターを切るのは憚られる。店員さんに一声かければよいのだが、何も買わずに写真だけというのはさすがに。けど、今日は別に何か買うモノがあって来たわけでもなく、不案内の店内をウロウロして本を探すだけの時間の余裕もない。泣く泣く撮影は諦め、店内に無料で配布されていた「三国志新聞」を一部頂戴して店を後にする。私のように頭の中に陳寿羅貫中吉川英治横山光輝川本喜八郎王欣太コーエーとその他いろいろ折衷されていて、尚かつ中国が嫌いな奴は果たしてレッドクリフを観に行くのだろうか?