『悶絶!!どんでん返し』

 酔った勢いでホステスのアケミ(谷ナオミ)の家に上がり込んだサラリーマンの北山(鶴岡修)だが、そこには彼女の同棲相手の竜二(遠藤征慈)がいた。一気に酔いも醒めて帰ろうとする北山を引き留め、竜二は博打を持ちかける。「俺が負ければこいつを好きにして良い。ただしおまえが負ければめちゃくちゃに犯させてもらう・・・」。結果は北山の負け。「犯される」準備をして寝転がる北山にのし掛かってきたのはなんと竜二の方・・・。後日再会した竜二に再びホられた北山は遂にそっちの喜びに目覚めることとなり、順風満帆のサラリーマン生活に別れを告げて竜二と結婚、竜二が行う美人局の元締めの手伝いをする日々。ある時は女として竜二に抱かれながらある時は男として手下の元スケバンに手を出したりと自由奔放で充実した日々を送っている。
 ところで、直前にポレポレ東中野で観た「桜映画社特集『死者の書』」の原作者が折口信夫だったのは全くの偶然。で、映画。核となるのはひょんな事から自分のもう一つの一面を開発される北山には違いないんだけど、それを開発して結婚までしちゃうチンピラ・竜二役の遠藤征慈のチンピラに過ぎない背伸びした粋がり様がなんだか微笑ましい。ヤクザと繋がりがあるように見せかけて手下を威嚇して、そんな自分はいっぱしのヤクザになることにあこがれて、シノギが美人局。で、その美人局も無計画そのもので、美人局絡みで二回も人死んでる。大体、「やいこの野郎!」って踏み込むと大抵もうカモは女の方とヤッてるって、美人局って普通その直前に踏み込んで来るのでは?*1、とか思いながら、で、怖いおニイさんが踏み込んできてもカモの方はヤってる最中なので大抵はそっちに夢中ですぐには気付かない、で竜二が「おいおいこの野郎」ってもう一度凄んでやっと、ってこの妙な間がなんかめちゃくちゃ可笑しい。ところで本作で登場するお色気のシーン、「フツーの格好の男と男が絡む」「男と女装した男が絡む」「女と女装した男が絡む」「裸でふん縛ってぶっ叩いたり水ぶっかける(男も女も)*2」・・・別にこの映画をポルノとしての目的に絞って観に来たわけではないのでこれだけ盛りだくさんの奇抜なシーンに私的には楽しくて良いのですが、こーいうのは「ポルノ」を観に来た客的にはアリなのか少し気になる。気になるといえば、北山と竜二を核とした愛欲のエピソードとは別のエピソード、竜二の弟分の丸山(粟津號)と手下で美人局要員のミドリ(牧レイカ)の悲恋(?)が私的には印象に残って良かったかも*3大体なんで「美人局」に「花電車」が必要なんだか・・・。
 笑える部分も含めて私的には楽しかった。けど上記のやたらストライクゾーンの広いシーンの数々や、最後竜二に捨てられた北山*4が、女装したままバター犬にアレさせたりと、ポルノとしてのターゲットをどの層に絞って作られたのかが少し謎に思ってしまった*5

*1:まあ、ポルノなので絡まないと話しにならない

*2:このシーンの「私も昔は散々この人にこうやられたもんね」という谷ナオミのセリフになんかウケた

*3:「出来の悪い女に同情して、管理している男の方が惚れてしまう」という日本の古典にありがちな、言うなれば「伝統」とも思える恋愛の流れを踏んでいるのに、そのきっかけが「美人局要員の中で一人だけ花電車が出来ない」とか、彼女を鍛える為に「ケツ穴に棒突っ込むフリをする」とかのお笑い要素とのギャップがまた可笑しい。

*4:竜二に捨てられるシーンも面白い。端から見るとバカ丸出しのこのシーンの熱演ぶりに少し感動した

*5:作中、東郷健が一瞬登場しているが、彼の「雑民」という考えに影響? エリートサラリーマンが倒錯した愛欲に身を委ね社会の底辺近くを彷徨うという北山の人生は東郷健に通じる気もする