その九十 ふじみ野市川崎 『地蔵堂』

sans-tetes2008-12-25

 ふじみ野市内の旧上福岡側、特に新河岸側に近い地域には地蔵が多い気がする。嘗て栄えた水運の関係で元々数が多かったのか、それとも市中心から離れ住宅化が遅れたことから路傍の地蔵を残す余裕が生じたのか。まあ地蔵が多いこと自体が私の気のせいかも知れないが。
 ふじみ野市内、川崎の交差点の近く、新河岸側を渡す橋を渡れば川越市。川越側は住宅化が進んでいるモノの、ふじみ野側は地蔵堂を堺にして住宅が終わり、この地蔵堂の立ち位置になんだか曰くを感じる。地蔵堂の後ろはおそらく昔からここに住まわれていたであろうでっかいお家で、そのお家に植えられている物か、それとも嘗てこの地にあった雑木林の生き残りか、やたら大きく枝振りがニョキニョキ広く伸びた木が地蔵堂を覆うように、これ以上成長すれば地蔵堂を脅かす勢いで生える。植物の名前に造詣がないので木の名前は全く知らず。この木のおかげで、日中大分早くにこの地蔵堂に影が落ちる。
 地蔵の高さは台座合わせて1メートル強、お顔は明らかに微笑むともなく、また参る者に御利益を与えそうな人なつこさを含み、とは言うものの表情からその御心の得難き仏様得意の表情。万人に愛される地蔵に特によく似合うこの表情を本日私は「地蔵スマイル」と命名。無責任なふざけた参拝者に対して、お地蔵様は相も変わらず何処吹く顔・・・ああこれぞ仏像の魅力。決してつれなくはないお地蔵様に地元の人も大分マイっているとみえ、台座の元に新しいお水・新しいお花、そして胸元には新しい前掛け。頭にかぶったやや古めの帽子に比して、この前掛けが黒の地に黄色で描かれた英語のロゴ、それに黄色で描かれた生意気そうなネコ。地元の人たちの愛を感じる歪な組み合わせ、それを引き寄せたのはお地蔵様、地蔵、かなりオシャレ。足下まで覆った前掛けの下にむき出しの台座、台座に刻まれた家紋、これは沢瀉の変形かな? 嘗て地蔵を供養した寺のモノか、立てた家のモノか、既に日暮れて橋の袂にあるナトリウム光の光源だけで家紋を接写するのには大分苦労した。そうこうしている内に家路へ急ぐ人々の通りが目立つように。歩道にでんと置いてある大型バイクを避けて子供連れのお母さんが車道にはみ出る。こんな有様お地蔵さんもよもや望むまい、バイクをどけるため早々に立ち去る。