『注文の多い料理店』

 同じくポレポレ東中野岡本忠成が制作途中で亡くなったため川本喜八郎が完成させた遺作とのこと。
 宮沢賢治の名作を下敷きにしながらも、不条理の中にコミカルな趣が皮肉への程良いオブラートとして機能している原作と比して、背景の趣・アニメの動きの雰囲気や登場人物に一言のセリフも用意せず、代わりに要所要所印象的な音楽を配する演出等、「山中で出会った不条理な出来事」というホームに「幻想」と「恐怖」の度合いを深めて原作とは全く異なる印象に仕上げている。あるいは、地元の名士として、また純粋な理想主義者として諸人の尊敬の的となる一方、忌むべき宿痾代々患う潜在的に排除の対象ともなり得る原作者の二面性を暗に反映させたもの、とかちょっと穿ったことを考える。『おこんじょうるり』とは全く異なる世界観ながらも、獣が変じた女性に表出する魔性*1に描き方にどこか似通う部分も。やはり物語のクライマックス、「鍾乳洞に置かれたテーブル、そこに座る二人の紳士に向かって」「猫目の女三人が妖しい仕草でもって踊りながら迫る」シーンにちょっと魅入られる。「食べられても良いかな」と。

*1:最も『おこん〜』は徹底的に控え目、『注文〜』は全面に、と言う相反する違いはあるけど