その九十一 品川区大井一丁目 『大井蔵王権現神社』

sans-tetes2009-01-14

 この日は確か、都内でも上映館が既に僅かしかなくなっていた『ダークナイト』を観るためにどっかの映画館を目指して疾走していた時だと思う。バイクでは初めて走り回る品川区内、たぶん、おそらく方向は海の方だろうと勝手に考えて走り回った挙げ句狭い道に入り込み、とうとう道は一方通行、どうひいき目に考えてもこれはつかねぇだろうと言う気持ちが刻一刻と迫る時間に押され焦りに変わる頃、変な堀跡みたいな道沿いに登場した「福禄寿」の看板。実のところ焦るほど時間に迫られていたわけでなはないこと、どちらかと言えば現在地が全く解らない事による焦りが大きかったことに気付く、のでまあ一息入れても良いだろうと、福禄寿の長い頭に触れればまた運気も変わるだろう、などとそこまでは思わなかったが、道に迷いさえしかめれば決して通りかかることの無かった縁を大事に。
 さて、蔵王権現を祭るこの神社、実は立派な伝説の持つ歴とした神社とのこと。その伝説とは蔵王権現こと天狗様にまつわる伝説。近くに山のありそうもないこの場所に天狗様の伝説とはなかなか興味深く面白いが、書いときゃいいのにそれら縁起を記すモノは辺りにはない。もっとも、余計な看板を置くほどの余裕はないほど者域は狭められ、集合住宅に囲まれ社の屋根を見下ろす形に囲まれた神社、遙か彼方の鎮守の森の名残か、周囲に抗うが如き銀杏の木が一本。ざおう・ごんげん・ふくろくじゅ。最後の「ふくろくじゅ」の音が、なぜだか語呂の良いように思えた。読み難いのに。福禄寿の姿は見えない事に関係なく、また、参拝後この場を離れれば二度とこの場所に来ることは無いであろう仮初めの縁を意識して、「無事目的地に着くように」に加えて先にお礼参りまで済ませてしまった横着をどうかお許しを。