『遭難フリーター』

 冒頭、監督兼主役の岩淵氏がえらいこっちゃな寝癖で納豆をかき込む姿はかなりなインパクト。「派遣」「非定住者」を扱っている作品として今の時期のリバイバルはタイムリーな上映と言える。前半はその「ハケン」として「夢を追う」或いは「東京にあこがれる」人々を時々「ハケンじゃない」人々とも比べながら自身で撮影、或いは自ら被写体となってその悲哀を描く。そのうち話題の中心は岩淵氏自身の非常に個人的な悲哀へと写り、いつの間にか自分語りの内にカメラは東京モノレールの車窓から流れる大井の倉庫街を撮しながら終わる。
 「今話題な立場にいる人々」の現状を期待して観に来ると肩すかしを食うかも知れないので、「サヨクでござい」を自称する人は観ない方がよい。私的にもその口だが、なんだか映画とか神社巡りとかの感想を書くと称していつの間にかダラダラと自分語りをしている事の多い某ブログを見ているようで他人事の気がしなかったのがいろんな意味でハズカシイ。環七の、大森から先、海に向かって次々と現れる殺風景な工場・倉庫の景色はいろんな意味でスキ。