『バオバブの記憶』

 「せんせえ。星の王子さまが、バオバブの木を恐ろしいモノとして忌み嫌うのは、星の王子さまの住む小さな星が実はその何倍からなる広大な植民地経済の恩恵によって成り立っていて、その植民地に住む人々がその場所にはびこるバオバブの木を強く信仰して星の王子さまと同じカトリックを信仰しようとしないのを恐れたからですか?」
 「先生は中国人だからわかりません」
 
 「膝の痛みにはバオバブの枝ですよ!」とかCM調に青年が語るのが楽しい、神木バオバブと現在もその信仰を何故かムスリム信仰共存させて生きるセネガルの農村のお話。偶像無ければ本来そんなにうるさくないのね。92歳の盲目のシャーマンの祈祷を受けに外国から来るというのは凄いな。でやはりそのシャーマンもバオバブは神聖な木。とかちょっと感心してる中そのシャーマン宅兼診療所の看板「毎日開業 ただし水・土休み」って意味わからんフランス語。要はいろんな事に大らかなんですね、とか書くと先進国民の上から目線でイヤだなぁ。
 本橋監督の過去作にも増してこの映画では余り主張はしない。ただ淡々と北アフリカの農村の様子を綴る。『アレクセイと泉』で、汚染された村の地中深くから湧く泉がその事実を持って無意識のうちの神聖さを宿していたのと異なり今作では初めから「神聖な木・バオバブ」を前面に押し出す。けど余り主張はしない。何か、「環境保護」とそーいうののプロパガンダを期待してこの映画を観に来ると拍子抜けするかもしれないけど、視点と論点をぼやかされた振りをしながら淡々と観ていた方が昔のNHKみたいで楽しいかも。勿論、何か考えながら観ても良いとは思うけど。ところでセネガルのある場所は北アフリカということで皆さん土人じゃない服着てて、偶に登場する民族衣装のおめかしが(着てるの主に女性だからだけど)とてもキレイ。登場する先生の着ていた衣装の緑がスゴク良かった。