激しく後ろ髪引かれて北海道


 さてもうさすがに訪問北海道話最後です。撮った写真についてはまたちょくちょくワケのワカらない題を付けて挙げるかもしれませんが、一応ここで区切ります。お話の最後に題して「なんか色々あって行きそびれて消化不良のまま去らざるを得ず、再び来なくてはイケナイ羽目になった諸所」です

 その1『北海道旅客鉄道株式会社』

 うう・・・スイマセン。いつ崩壊してもおかしくないJR北海道の路線を目の前にしておきながら、ノル事はおろか、駅で乗るつもりのない乗車券を買うことも、入場券さえ買わず。これではまるで『いい旅チャレンジ20,000km』を車で達成した腐れ乗りテツはないか・・・。と言うか、一応はあちこち駅や路線回ったのに列車に全然行き合わない。本数少なすぎ!(逆ギレ)。

 と言うワケでJR北海道様、次に訪問する時は必ず乗りますからどうか必ずツブれないでいて下さい。

 その2『茂津多岬灯台

 「海面から灯台頂部までの標高が日本一高い灯台」。場所的に訪問予定日の旅程で一番最後に訪問する場所なのに、この頃はまだ北海道の広さを侮っていたので、途中このような

 テトラポッドとか

 こーいう奇岩とか(これはせたな町大成区の「親子熊岩」)

 こーいう宇宙人の乗り物みたいな水門とか、そんなモンを眺めながら移動していたら陽がもうかなり傾く。少し焦りながらせたな町、島牧村境にある灯台入り口に着くと、灯台までの道はかなりの勾配の山道を登っていくので焦る上にかなり不安になる。案の定道は途中から砂利のダート。仕方なくバイクを置いてそこから歩く。

 関東人の感覚では、こんなところに灯台があるとはとても信じられない・・・。
 そして事前情報通り、道沿いに一帯の「熊注意」喚起の看板が多数。噂とネタで聞いてはいたが、実際目の前にしてますます焦る。

 熊とのニアミス避けの準備は全くしていなかったので、仕方なくケータイで音楽をかけながら(ちなみに選曲はひたすらキリンジ)、後は日没との勝負。バイクを置いて15分程登ると休憩所とトイレ、それに辺り一帯の林道を記した地図があったため見るが、目的地までの距離が詳しく書いていないのでまた不安になる。

 大雑把にここまでの歩行速度と陽の傾き加減から、灯台に着く頃に丁度日没ということを目測。日没に間に合えば、絶景が拝めること間違いなのだが、陽が落ちて視界が悪くなるとお互いのニアミスのキケンも増す。そして何より、宿のチェックイン時間が「今」なのに、宿までの距離ゆうに100キロ。「人口カバー率90%」イーモバイル携帯の電波は当然の如く「残りの10%」。
 大体海から吹きさらす風が道周囲に生えているクマザサ(これも凄くイヤ)をひっきりなしに激しく揺らしてキリンジの歌声は殆ど周囲に届いていない。そんなこんなで色々不利な点が次々に明らかになるに至り、この場所にいること自体に物凄い不安を感じるようになり、「そうか、灯台のあたりでクマにあっても日没だから写真に撮れない」とか「戻ったらクマにバイクが倒されていやしないか」「バイクで逃げてもクマは60キロで走れるからダメ」とか余計な妄想が頭にひっきりなしに浮かぶようになり、後は一目散に山を下りるまでそんなに時間はかからなかった。

 今考えると日本最高峰の灯台から見る夕日を見逃した事物凄く口惜しく、返す返すも無知が敵であること、身に染みる。宿*1には予定より一時間遅れで到着した。 
 
 その3『泊村 茅沼炭坑跡』

 大体の場所は判っていたのですが、当てにしていた地元での情報がほぼ皆無、唯一の情報が前日の宿で聞いた「まあ、あんまり山の方だとクマは出るかもしれませんけどね」なのでこれも殆ど行き当たりばったりの訪問。ただ時間に余裕はあったので、辺りの神社を回ったりの時間くらいは取れる
 で、その神社にいた狛犬。誰かに似てね?

 そう、藤岡弘、!?
 
 更に神恵内村役場前看板のキャッチフレーズが格好良く、ここが原発の町、泊村のお隣であるということを鑑みることに恐ろしく深みを帯びた言葉に震撼。ちなみに某身内の結婚祝いに送った日本酒はこの街で入手したのですが味はどうでしたか? いろいろとこれは幸先良さそうなのでゲンの落ちないうちに目的地へ。

 泊村、茅沼村地区の入り口です。この地区へは村のメインストリート国道229号線より茅沼村地区へ道道342号茅沼鉱山泊線が伸びており、この地区のメインストリートとなってます。名前からしてこの道路の起点(国道から見ると終点)に旧鉱山跡があると踏んで、泊村市街の幾つかあるハコモノのうちの一つにバイクを置いて、茅沼地区を歩き回りながら山の方へ向かうことにします。

 県道に沿って国道を県道は玉川という川に沿って山に向かい、道に沿って点々と住宅が並びますが、茅沼村の中心集落は玉川を挟んで道の反対側のようです。おそらく、炭坑現役時は抗夫とその家族達のための鉱山住宅があったと思われます。鉱山住宅と言えば関東在住のそっち系の人は足尾町を思い浮かべますが、こちらはその名残は殆ど見受けられず、普通の住宅地と言った構えです。昔ながらの雑貨屋や旧型の丸い郵便ポストが何となく昔からあるような佇まいを見せる位です。これは、「原子力発電所」と言う産業を今も持っている故の大きな違いでしょう。普通の住宅地でしかも都会でもないので、こういう場所に住民でもない場違いな人間がウロウロしていると警戒されてしまうのですが、そんなときはこのようにネコの存在が凄く助かります。さも「ネコを撮りに来た」風に振る舞えるからです。目的の三分の一くらいは正しいワケですし。ただそれでも十分怪しいですが。こちらの深い思慮をネコも慮ってか、興味は持ちながらもこちらを激しく警戒、この写真の直後一瞬にして消えていきました。

 思うのですが、「廃墟・廃屋が好き」とか公言すると、いろんな意味でぶっ殺されても文句は言えないですね。おかしな趣味が認知される世の中になりました。玉川を渡って道道に合流、そのまま山の方へ向かうと途中診療所や老人ホーム、色々と行政の補助を受けてそうな建物が並び、バスの終点・折り返し地点を過ぎると急に家はなくなり、道の向こうの山に旧鉱山跡のボタ山が、何故か草木が生えずそのままズル剥けのハゲ頭よろしく顔を出しました。

 「茅沼炭坑線」の名の通り、道は旧鉱山の方へ。

 家がないのに電柱と送電線があるのが気になります。そもそもタンク尾が閉山して大分立つというのにこの道がしっかりと整備されているわけも気になります。が、私のようなモノ好きには大変有り難いことには違いないので、ここはひたすら目的地に向かい歩くことに。
 
 この野郎また出やがった。つまりこれが電柱と送電線の理由です。つまり、原発で作られた電気が山伝いにここに来てここからこの周辺に配分されるというワケです。これが要するにこの道路が整備されている理由なのですね。

 ところが変電所前の送電線、泊村方面へ向かう線と更に山へ向かう線とに分岐していて尚も道に沿って伸びている。この先に何があるのか? はっきり言って気持ち悪いですね。気持ち悪いと言えばさっきから風が吹き付けるたびにどこからともなく高音の笛を吹くような音が聞こえる。電線が揺れている音ではないので音の正体がしばらく分からず。

 理由はコレ。積雪時の路肩表示板の柱に開いている穴に風が吹き付け音が鳴っていたということ。更にしばらく行って再び北電関連の施設が出現、電線、遂にここで途切れ、以降、人のいる気配は全く無くなる。

 そうこうしている内にすぐ近くまでボタ山が迫るが、

 道はボタ山へは向かわずボタ山をそのまま横に眺め

 道路の舗装が途切れる。この先砂利を敷いたダートではあるが所謂山道に。
 考えてみれば、ここで県道は終わって以降未舗装の山道は林道の管轄になるというのが自然なのだが、「炭坑線」の名の通り、道は炭坑前まで続いているモノだと勝手に想像、となるとここが終点であるはずはないと頑なに思考することを拒否、と言うか、北海道の人のいない山道を、キケンのない程度でのスリルをもって経験したいとの思いが強かったことも確かだったのだとも思う。一番危惧されるのはやはりクマ害。例の如くクマ避けグッズなど持っていないのでここからはやはりケータイの出番。選曲は「QUEEN」理由は「フレディの高音」に期待して。

 もはや説明する必要はないでしょう。とにかく行けば行くほどそのまま深く山に入っていく。登山というほど険しくはないのであまり疲れるわけでないのがまた始末に悪い。そのため、まだ県道なのだと(北海道に限らず山の中の都道府県道が舗装されていないことなどは普通)、この先に道道の終点と炭坑跡があると頑なに思い続け更に先を進む。

 砂防ダムが現れる。ここまで道はずっと玉川沿いに伸びてきていた。

 ダム、最近は手入れがされていない様子。実はこのダムの手前で正式に「こっから林道」みたいな看板が立っていて、

つまり名実共に道道が終わっていることを宣言されたのが、「炭坑は川の近くにある」との根拠のない説が常に頭にもたげ続け、つまり道道が林道になったから尚、既に使われていない炭坑の跡がこの先にあるとますます勝手な思いこみに支配されたまま、尚も先を急ぐこと、火に油を注ぐ役目にしかこの人里離れたダムはならなかった。

 さすがにこの辺りで「おかしい?」と気付いた気がします。その直後足下に

 なんか巨大な動物の糞。コレはアレかな?もしかして。つまり今の気分は

   ∩___∩         |
   | ノ\     ヽ        |
  /  ●゛  ● |        |
  | ∪  ( _●_) ミ        |
 彡、   |∪|   |        J
/     ∩ノ ⊃  ヽ
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
  \ /___ /

 まさにこういうことです。的確すぐる。すげぇよな、2ちゃん。

 糞にはハエがたかっていますが、半分くらいは乾燥して崩れています。中には植物の種がびっしりと詰まって木の実を食べた後の排泄物のようです。前日に雨が降っていたせいもあり、辺りにこの糞をブチかましたヤツの足跡も残って無く、少なくともブチかましたヤツがまだ近くにいるとは思いませんが、もしやヤツがあれなら要はアレの活動域近くに足を踏み入れているというわけで、これから先ニアミスする可能性も高くなるということで、コレはつまりどうするかと言うことで。

 戻りました。今来た道を。

 今来た道を戻りながら、ふとこういう同じくらいの高さにブチ折られた木とかを見るとやっぱアレがやったのかなとかまた余計な考えが頭に浮かぶ。すげぇな、糞。アレのモノかどうかまだ決まったワケじゃないのに。取り敢えず、フレディ、頑張れ。

 タヌキかな? タヌキじゃないよキツネだよ、たぶん。さっき通った時はなかったなんかの足跡。小動物も結構ウロウロしているのですね。そういえば今回の旅でカメラ持っていた時にはキツネと遭遇することはありませんでした。

 結局、あの先に炭坑跡はあったのか? 以降の道中ずっと気になっていた事。気になりすぎて、このお陰でまた行かなければいけない羽目になりそうで、つまり大きな心残りなのです。

 などと思っていたら、該当地域をグーグルマップで見て一気に解決

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 敗因は要するに、「人口カバー率90%」というダケの事でした。文明の利器の圧倒的勝利でした。人生往々にしてこういうことだらけなのです。だからこそ、私は再び北海道に行くことになりそうなのでした。ああ腹が立つ。 おわり