田本駅その2 〜突入〜

 (http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20091108の続き)

 さて、泰阜村の夜は早々に更けていったお陰でその分朝も早く、順当に起床、その後順当に準備の上予定通り出発。出るに当たって宿のご主人と宿外飼いの黒ネコが見送ってくれました。これで恐らく今日一日怖いモンはありません。

 宿からココに至るまでの行程は端折りますが、恐らく田本駅と同程度の高さ(低さ)にある山影の宿から約300メートルの高低差を登ってこれから同じように約300メートルの高低差を下って駅ホームに至るわけです。こうして文章にすると本当にバカみたいですね。ご託はこの辺にして

 田本駅再突入のスタートです。

 入り口からしばらくはお隣の工事したての道路の恩恵を受けてその側道のような趣を見せ余裕で走破できそうな様子を見せるのですが。

 後ろ振り返るとこんな。「狭い」「急坂」。入り口でこうですから今後の苦労は自ずと偲ばれます。

 調子に乗るのも束の間、田本駅へは明らかにヒドイ方の道が口を開け、文明の恩恵そのものを拒否するかの如く、先ほどまでの安心感はモノの見事に吹っ飛んでいきます。右側の舗装したてのピカピカの道路がこう言ってるようです「バカはあっち←」。

 別れた途端こんな道。写真で角度が掴みにくいのが残念なのですが既に結構な急坂、油断するとそのままズルズルと滑り落ちていきそうな勢いはあります。前日雨が降ったとは言え南向きの斜面に作られたこの道、おおむね日当たりも良好、つまり不幸中の幸いというわけです。用もないのに秘境駅を訪問しておいて勝手に不幸はないモンだ。

 進行方向右側、つまり川と反対側の山側はこんな感じです。組まれた石は嘗て民家や畑のあった名残でしょうか? このも一つ上の当たりには人家の屋根が少し見えていずれにせよいずれせよここら辺までまだ生活の臭いは残っています。そんな臭いに背を向けて

 我が道はひたすらケモノ道(注、誇張です)

 お世辞にも足元が良いとは言えませんが、一応簡易舗装が敷いてあるのでチャリ、オフロードバイクくらいの重量は耐えられそうな様子*1ですが、下(つまり駅方面)に向かうにつれて石がゴロゴロ落ちていたりでっかい石が突きだしていたり、当然川側は崖っぷちなのでヘタによけて足を踏み外す可能性もなきにしもあらず。
 
 と、足元に気を取られているとなんと文明の利器。当然日中は使用されることはないと思いますが、夜はちゃんと点くのでしょうか? 確認する前にここまで辿り着けない気がする・・・。

 ついでに川側に柵まで付きましたが、見ての通りの線形、楽観とほど遠い

 更にここら当たりから山側は剥き出しの崖が目立つように。侵食と崩落を繰り返して独特の造形を見せる崖肌は面白いのですが、様は崩れ易くなっているということで、こちら側も油断が出来なくなりつつあります。

 と、ここで下から上って来る人と行き合いました。そう言えば先ほど遙か下の方で電車が走る音がしたのでそれに乗って登ってきたのでしょう。どうやら地元の方ではなく、私同様の物好きのようです。今乗ってきた電車で降りたのはこの方一人だったの私が上から来たのが不思議だったらしく驚いておられました。

 そしてここらから急な坂はいったん一休み・・・その代わり、見ての通り空中を渡す鉄の廊下。

 まあ頑丈そうではあるんですけど。

 けど一枚下はこんな。

 その先に何となく風光明媚の予感はするモノの。

 甘かった。崩落注意か? いずれにせよタダ事事態注意の看板の予感。

 そっちかよ・・・。人が落ちてもゴミ落とすな〜。

 鉄の渡り廊下が終わり、道は再び急な下り坂に。ただ、周囲を覆ってた木々は幾分少なくなり

 このように遠くにはちらほら天竜川が見えるように。まだ遠くですが。

 などと油断していたら再び鉄板。しかも坂道。更に柵崩壊。これ、落石をモロに受けた跡か? 

 どうも、犯人はこいつっぽい。ここら当たりから山側の崖、巨大な岩や木が落ちそうに踏ん張る、現に落ちてる、リアル落石注意が激しくなり、潜在的なキケンが物凄く増す。

 ただ、木が折れてる分眺望が開けている分景色を楽しむことが出来るように。ただし、一応断っておきますが、これから私は電車に乗りに駅に行くのです。

 下の方に先日渡った橋が見えました。まだあんな下・・・。

 と油断していると、出ました倒木。

 坂はますます急な中、このエリア一帯なぜか多くの倒木。

 頭上を見るとどうも原因はあれのようです。

 既に倒れた木をまだ建ってる木が一生懸命支えています、うんせうんせ。全ては仲間の踏ん張りにかかる倒木の美しい友情。

 道はなおも無情に角度を変えず続きます。

 なぜかどんどん道は悪くなっていきますねぇ。

 ある地点から道は九十九折れに続くようになり、険しさは増加。ここら当たり再び木々と絶壁に挟まれて眺望は悪く、川側に柵もなく、崩落と滑落のキケンはとても高くなり、防止のためか一部このように剪定した木の丸太が路肩を塞ぎ、意識してか無意識のウチか滑落を防止、しているんでしょうか?

 ほんの少し川が見え始めますが、倒木落石更に更にヒドくなる。

 大まかに、九十九折れの後次の道が現れる毎にまた別のヒドさが現れるといった感じ。

 なぜ駅に近づいているのに? 確かに駅は谷底*2にあるので上から降ってきた落石や倒木が次第次第に溜まってこのような惨事とでも言った方が良いような状況に。本当に駅は近づいているはずなのに・・・少したりとも気を抜くことが出来ない。

 一応滑落防止のためだろうか? ボロボロの柵が登場。坂が急で捕まるモノがあれば有り難いのは確かだが、間違ってもアレに捕まろうとは思わない。

 柵の袂には準備万端の落石予備軍。

 
 そして、たぶんここら辺が田本駅山登りルート中最大に怖い場所。小指で押しても崩れそうな落石予備軍が頭上をわらわらと覆い

 それを支えているのは崖に生えた木々の細腕のみ。よいしょよいしょ。

 今更ながらおっかなびっくりで進む道、焦って駆け抜けようモノなら川側の崩落が待っています。

 急坂はほぼすっと変わらず、遂にこの道は先日通った分かれ道まで辿り着くことが出来ました。こちら側のルート、下り、写真撮影しながらという条件付きで30分といったところか。道の状況がいつもこんなに荒れているとは限らないので一応の参考値ですが、用心は常に怠らないよう。

 「鉄道防備林」。今日ほどこの言葉の偉大さが身に染みたことはありません。お前らはとってもエライ。標識が負けて引っこ抜けてることくらいどうって事無い。

 無事帰って来れました、田本駅。何とか列車には間に合う。飯田線の旅でこれ程安心することはありません。
 まだ列車が来るまで多少時間がありますのですこし辺りを観察してみましょう。

 まずごく簡単な作りの待合。

 本日は先客がいました。

 待合に貼られていた「緊急避難場所案内」。所要時間30分。大急ぎで向かうと確実にキケン。と言うか田本駅滞在中に何か緊急の事態が起きた場合高確率で死んでると思う。ま、緊急事態はさておきこれが一般的な脱出路というわけですな。二日かけて今回走破したルートと重なりますので参考に。

 待合からホームを眺める。暗示的な足跡。夜はコワイ。と言うか夜この駅にいるというだけでコワイ。

 やはり、ここは谷底の駅なのですね。

 そうこうしているウチに豊橋方面行き列車が到着。時間通りですが到着前の合図一切なし。最後尾の扉から乗ると本列車の社用の他にもう一人車掌? が一人最後尾の席で寄っかかって寝ていました。コスプレオタクではなくちゃんとJR東海の制服を着ていたので間違いなく本物と思われます。飯田線に乗ると時々出会う光景です。単なる移動の最中なのでしょうか? 
 色々苦労しましたが田本駅、場所の雰囲気とアクセスの悪さ(と言うか無理矢理さ)は確かに秘境駅の名に恥じない駅でした。ここらしばらく飯田線は風光明媚な車窓が続きます。

 

*1:だからといって本当に二輪で走破しようとして天竜川にダイブしても何ら責任は負いません

*2:そもそもこの時点で何かが間違っている