『白日夢(1981)』

 (注、以下表現が下品に付き注意)
 昼下がり、ある歯科医の診察室で。治療のために麻酔を打たれた青年(勝然武美)と並んだ隣の席でドクトル(佐藤慶)は麻酔かけて意識の朦朧とする令嬢(愛染恭子)の和服を脱がせてその乳房に貪りつき・・・はあ?

 いきなりバラしますが夢オチです。言わなくても判るか。当時佐藤慶が「本番」で臨んで話題になった映画とのことですが、本番とかそれ以前に「トンデモ」の系譜として名を連ねる武智鉄二監督作品として名を残してしまう一作とした方が通りがヨイのでは? 何故か大当たりをさらったらしく味を占めた武智監督がこの路線で更にトンデモない『華魁』を作ってしまって後世の名画座を爆笑の渦に巻く事になるのはご存じの所。資金の潤沢な芸術家は本当に留まるところなく暴走するなぁ。後世「トンデモ映画」を裁く裁判が行われる事になった時、一番の戦犯はこの映画に足を運んだ「観客」となること想像に難くない。こーいうのを見ているとやはりいろいろな分野は文系によるある程度の統制は必要で、想像力の足りない文系が想像外の想像力を持つ連中を嫉妬して断罪しているようにしか見えない「事業仕分け作業」がある意味正しいんじゃないかと錯覚してしまう。アレもある意味白日夢だ。実害があるのが最大の難点だが。

 まっ、夢なんで何してもイイでしょ? とばかりに武智監督は徹底的にやりたい放題です。歯科医院診察室の看護婦入り乱れての乱交から始まって、以後ドラキュラみたいな出で立ちがお約束となる佐藤慶*1が初登場のディスコのシーン*2から、ホテルで嫉妬に狂う青年の目の前で延々と佐藤慶愛染恭子を責め立てる場面、本番よりこの場面の「ブリーフ一丁、顔の前で諸手でムチを張ってホテルの窓へ向かって威嚇する」方が恥ずかしい気が・・・。この後のカラミ→本番の過程で登場する局部隠しの「モザイク」が、不思議な事に「別角度からの喘いでいる愛染恭子のアップ」。この新機軸的演出(?)、この武智監督以外で観た事ないので恐らく特許を取っているんでしょう*3。この「顔モザイク」のせいで手マンしたりクンニしようと顔を近づけて局部と重なった佐藤慶の後頭部が愛染恭子の「顔」になってて佐藤慶の後頭部にも顔のある「あしゅら」になったみたい・・・。この場面、もう延々と二人のカラミを映しながら時々場面変わって全く別の「縛り・ムチ」で佐藤慶が責めるSMのシーンと交互に映すといった演出が取られる。そのうちSMの方でもハメ始めるんだけど、こちら側の「顔モザイク」が何故か「能面被った人物が扇ひらひら舞っている」いや本当なんだって! これが佐藤慶愛染恭子のカラミに重なって舞って(?)いるんですから、我慢できずに爆笑*4。もう何が何だか・・・。
 
 まあ夢なんで、わざわざ全裸の愛染恭子が車で佐藤慶の元を脱出してもこの何が何だかは最後まで果てしなく・・・「これから君の世界が開けるんだ」・・・昔はデパートの屋上にあんなチャチなアトラクションがあったんよなぁとか感心する間もなく延々と愛染恭子の尻ばかり映り合間に青年は叫ぶ・・・「僕でーす!」じゃねぇよ。佐藤慶も黒ヒゲの海賊になってるし・・・、でもって隠れてるはずの深夜のデパートでピアノ弾き出して何故歌う! ちょい役で登場した殿山泰司を驚かせたと思ったらエレベーター逆上り、もうここまで来ると夢オチにしか収拾できない事はわかっているので「ご苦労様」くらいの感想しか思い浮かばなくなっている・・・。
 で、アレよという間に目が覚めて・・・最後のヨットのシーンでアノ格好の佐藤慶が出てきたのは服装と周囲とのミスマッチとさすがにこの期に及んでは予期していなかったため最後の最後で爆笑する。もうダメでしょ。もしこの後『華魁』とかが続く武智鉄二二本立てだったらさすがに気が狂うと思う。

 もう、「皆さん*5スゴイ役者魂だ」としか総括できん。いやホントに感心しますよ。

*1:コレはコレでハマリ過ぎで良いんですけど、けど両手を開いて立ってるだけだとだんだんバカに見えてくる

*2:と言っても不規則に延々と愛染恭子が踊ってるだけで意味が見いだせないんですけど

*3:違うと思う

*4:映画後半に再度登場する「顔モザイク」で能面の人物が二人、面だけ付けた佐藤慶愛染恭子だという事がわかる

*5:ほぼ佐藤慶