その百四十九 横浜市保土ヶ谷区上星川 『杉山神社』


 それまであまり神奈川県とは縁を持つことがなかったのですが、とあるきっかけで神奈川県の病院で大腸を取り出すことになり、結果神奈川の地で自分の体の一部を捨てたという強烈なご縁を得ることとなり、そのご縁を通院の度に面白可笑しく消化しております。ところで主治医の先生、切り取った大腸の写真を受診の度に見せる見せる言ってくれるのに次来ると必ず忘れているとはどういうコトですか?
 そんなワケで神奈川横浜がこんな山がちの地形とは知らず、手術後外出許可が出たのをいいことに近辺散歩としゃれ込むや住宅密集しつつも連なる山また山に遂に来た道を失い住宅が途切れて緑地になり、横浜羽沢駅を越えて、相鉄線沿いのごちゃごちゃした街についた頃には本当に死にそうなくらい疲労していて、何度も救急車を呼ぼうと思いながらいま来た山を再度越えてようやく病院に辿り着くも次の日腸が閉塞してることが判って更に一ヶ月間入院が延びるというコトがありました。閉塞が楽しいのはタブレット式で交換している単線区間くらいなモンで、この時は皆さんに大変なご迷惑をかけましてあいすいません。
 そんな思い出の上星川の街を元気になってふらふら歩くと、ごちゃごちゃした駅前、ナゾのお店、急坂に密集した住宅地、その先どこに繋がるのか予想がつかない細道、極めて面白い街であること、あのとき病気で体力が落ちていてもそのカンは衰えていなかったことの証と少し誇らしげに思います。東側から大きい道に依らず相鉄線沿いに向かうと住宅地が突然途切れて一瞬だけ深山幽谷の趣、生活排水なのだろうがエライ勢いで流れる渓流を脇に再び平地に降り立つと目の前に国道16号、首都圏近郊のシンボル国道16号もこの場所では車線が細くて相鉄線に接していて郊外型大型店舗の影も形もなくまだまだカワイイもんです。国道を渡れば相鉄線沿いの駅前に連なる市街地なのですが、渡らず道沿いに左側を見ると先程までの山の続きのような緑に覆われた神社が見えます。杉山神社です。
 今時住宅地の近くに昔からある神社は新たに移り住んできた住民に迫害されるか上手く溶け込んで共存するかなのですが当社は上手く後者を保っているようです。目の前の交差点が「杉山神社前」と付いているのですから当のお社がないときまりの悪いことこの上なく当然のことでしょう。本殿に掲げられた「杉山宮」の額、縁のないシンプルな造りですが不思議な威厳を感じます。本殿もそんなに大きいわけではないのですが適当に年代を感じさせるかしこまったこぢんまりさは恐らく木造の社殿が醸し出す雰囲気なのでしょうが、現本殿、建てられたのは恐らく昭和を上る事はないと思います。木の建物はヨイのです。
 境内も参道周囲に玉砂利がまかれキレイに掃き清められて、と言いたいトコロなのですが、イヤ確かにキレイに掃き清められているのです、恐らく朝イチで宮司さんか氏子さんかのお仕事でしょう。ところが昼過ぎのただいまのお時間、その掃き清められた玉砂利の上をお子様が数名、何やら沢山指でお絵かき。その内どこからか拾ってきた棒きれでなかなかスケールの大きなお絵かきを始めるわ失敗作は足で踏み消し砂利を激しく蹴るわ、遂には手水場の水、柄杓を動員して大作に挑み始めます。これではいくら朝キレイにおそうじしても陽が落ちる頃には全くの徒労というワケです。けど近くにあるモノ徹底的に利用して「遊ぶ」コトはお子様の基本です。宮司さんや氏子さんはちょっと不機嫌かもしれませんが本殿の御祭神は恐らくお許しになるでしょう。どうせまた明日の朝キレイに掃き清められるのですから、そのために。杉山神社の御祭神は・・・ええと・・・「イソタケル神」?、スサノオの子供? 何となく子供に寛容そうですね。