三笠市萱野 「ライダーハウス旧萱野駅」

 北海道空知地方、かつて炭礦で栄えた市として強烈な印象を残すのはその規模だけでなくその他いろいろな理由により夕張市がダントツなのですが、そのお隣*1三笠市も同様に炭礦で栄えた市で、閉山後の代替産業として観光という手段を重視したことも夕張と似ているのですが、一番の違いはおっ建てたハコモノを最小限度に押さえた結果として現在豊富な炭礦関係の史跡が残っているという点で、カネ使いすぎて大コケするとかそれ以前に最善の選択肢を取ったことすごく高い評価を上げても良いと思われる市なのです。その三笠市が観光関係で走った唯一のハコモノが旧幌内線の線路と駅を利用して建てられた「三笠鉄道村」と云う施設で、文字通り鉄道関係の資料に重点を置いて建てられたテーマパークなのですが、ここでは園内で催される講習を受けることでなんと園内動態保存中の蒸気機関車を動かすことができる! と云うとてつもなくテツ野郎のケツをくすぐるイベントが行われるのです。色々七面倒くさい法令の縛りがある中でこれをやっちゃうのは実は物凄く凄いことなんだと思うよ!? だからみんなおいでよ三笠市

 さて今回の話題はその三笠鉄道村に深く関わる旧幌内線と関係する話題なのですが、場所は鉄道村のある幌内地区よりずっと西側、幌内線で云えば室蘭線より分岐する岩見沢駅に近い場所での話題です。ここに旧幌内線旧萱野駅駅舎を利用した「宿」があると聞いてさっそく泊まってみることにしました。

 「ライダーハウス」とは文字通り主にバイク乗りや自転車乗りを対象とした簡易宿のことです。よう知らんけど。そもそもライダーハウスと呼ばれる宿がどういう宿かというと、説明するのは面倒くさいので興味あれば勝手にWikipediaなりで調べていただきたいのですが、とぞんざいな説明をしますのも私、ライダーハウスの利用は今回が初めてで、私は性格的に絶対ライダーハウスは合わないと自負していているのでこれまで前回の北海道行では敢えて避けておりました。それはライダーハウスについて勝手に調べていただけるとよくおわかりかと思うのですが、この種のお宿の構成員となるには自身のプライベートと引き替えという場合が多く、私のように極度の人見知り且つ人間不信な輩にとって基本心細い旅先*2の仮寝場でこのような扱いを受けることは非常に辛い体験と云わざるを得ません。何もわざわざ遠くまで来てこのような扱いに身を置かなくても、と思うのですが今回敢えてこのような過酷なミッションに身を置こうと思った理由それは

 この「ライダーハウス旧萱野駅」、旧駅舎をそのまま利用して宿泊できるという、現在の北海道ではちょっと敷居の高くなってしまった「駅寝」の体験をあくまでも擬似的とは言え比較的安全に体験できるという、またテツを自称するのにJR北海道路線普通列車の不便さに辟易してつい燃料系自家移動手段で道内を移動しちゃう罪悪感と終始向き合いながらの道内旅行中の転向ライダーにとってこの上ないその贖罪の機会こそ「元駅に泊まる」と云う苦行によって与えられるという、実はおまえ楽しみだろ。

 別に同宿の人とか宿の管理者さんとかとあまりコミュニケーションを取らなくて済むから、と言うワケではなくいつもの如くあちこちウロウロと余計な場所で時間を取ったせいで宿に着いたのは19時頃になっていました。辺りは既に真っ暗です。このお宿、元駅という普通の感覚で言えば過疎地域に位置しているため周囲に目印になるモノはほぼ皆無、最寄りの道道背沿いの看板も当然照明など付いていない、と言うワケで日が落ちてからのアクセスは非常に困難を極めるのでこの点は気をつけた方がよろしいと思います。
 で、お宿。到着してみると周囲にバイクが2台にお車も。旧駅執務室に当たる辺りに電気が灯りが灯り何やら酒盛りの様子。密かに期待していた「シーズオフ故に実は宿泊客自分一人、で駅を占拠」と云う状況ははかなくも破れたのを知ったのです。
 酒盛りに興じていたのはお年頃後期中年の頃にあたるであろう3人の男性。かなり盛り上がっております。この環境にノコノコと顔を出すのは人見知りのおまけにド下戸にとってかなりリスキーなミッションですが仕方がありません。「こんばんは。あのーちょっとお尋ねします」「おう、どうぞどうぞ」。お酒は入っていても、イヤお酒が入っているからか、3人の先達方はフレンドリーに接してくれます。ド下戸の始終シラフにはこの「酒の勢いの心壁の低さ」が逆に戸惑いになることがあります。酒飲みには判るまいこの気持ち、とか言って私もシラフでこんなバカな文章書いているのですからタチの悪さで云えば私の方が数段上ではあるのでしょうが。そのタチの悪さを研ぎ澄ましてここはうまく取り入ろう。

 とりあえず、酒盛り衆の中にお宿の管理人の方はいらっしゃらないコトは判明しました。管理人の方は旧駅の宿を出て旧駅前ロータリーの旧駅前通り、旧駅から目の前にある床屋さんのお隣に住んでらっしゃらるとのことで・・・ああややこしい「旧」、はともあれ教えてもらった通りその床屋さんのお隣のお宅にお声をかけました。闖入者に対する田舎の防御体制「戸に鍵をかけない、インターホンがない」に苦しみながらそのお宅に声を掛けるとお年を召したおばあさまが出て参りました。ちょっと意外です。
 この三重苦に戸惑った人見知りの私、発作的ドモリの症状まで出てしまい、こりゃ駄目だと思ったのか管理人のおばあさま、自ら先に立ってお宿の使い方を説明してくれることになりました。もしこの記事を見てこのお宿を利用したいという物好きがいれば以下重要! 
 
 お部屋は板間と畳部屋の二部屋。旧駅構造で云うと駅職員事務所や切符を売る窓口の辺りが板間でその奥、昔は恐らく駅宿直員の仮眠場所が畳敷のお部屋。両部屋仕切られているわけではありませんので、全部屋ほぼ相部屋状態。大抵のライダーハウスでは最低限考慮されている男女別が通じませんのでコレは注意。板間畳間、どちらを使うかはその時の宿泊人数によって自由ですが、大荷物は畳が傷むので畳間には持ち込まない。
 
 座布団、毛布はアリ。あくまでも申し訳程度なので寝具は持ち込んだ方が無難。私は持参の寝袋で済ませました。屋根壁あって雨露しのげるのだから新聞紙だけだって平気だよ。

 水道は利用か。北海道のお水は「冷たい」と云うだけで大変美味しく感じる。北海道来たら生水危険な分水道水だけでヨイ。でも不思議なご当地飲料見つけたら積極的に買ってあげましょうね。ガスコンロはあった気がしましたが、よく解りません。酒盛り中の先達方は簡易コンロを持ち込んで利用されておりました。 

 トイレは外。コレは駅時代からの建物をそのまま使っているのでしょうか? 設備は改装されていますから清潔です。

 簡易シャワーあり。 

 以上設備で一晩500円也。シャワー利用時はプラス300円。安いか高いか? 安いでしょうね。連泊できるかは不明です。 

 ちなみに私はシャワーは利用せず15キロ先にある所謂スーパー銭湯を利用しました。以前はもっと近くに他の銭湯があったそうですが現在改装中で復帰の可否は不明です。地図で見ると他にも温泉地があったりするのですが、利用の可否は不明ですので事前調べた方が無難ですね。私が利用したスーパー銭湯は管理人のおばあちゃんが教えてくれます。15キロなんて北海道では近い方です。偉い人にはそれがわからんのです*3

 とりあえず、風呂を理由に酔席を抜け出します。風呂の場所、私は今その風呂に入ってきたというまた別の単独ライダー先達の方から聞きました。
 実は先日バス停泊でその後も押せ押せのスケジュールとあって満足に風呂に入ってなかったせいで結構長風呂の挙げ句アイスとか食ってたら結構な時間が経ってしまっていて再び15キロの道のりを戻って来た時には酒盛りは既に終わっていて先達皆さん就寝してました。こういう場所ではさっさと切り上げて迷惑掛けないようにする当たり、皆さん旅慣れていらっしゃいます。皆さん寝入った後ノコノコ帰ってきた私が一番迷惑だったというよくあるお話でした。スイマセン。

 さて朝です。クソしたついでにちょっとこの「ライダーハウス萱野駅」周囲を見てみましょうか。

 最初にお話しした通りお宿は旧駅舎をほとんどそのまま利用しています。ですので多少の改装はしておりますが、外観から古い駅舎の雰囲気をほとんどそのまま味わえます。この場所の泊まる・・・コレは最大の醍醐味ですね。

 ホームとレール、あと旧幌内線路盤については廃線後一度撤去、整地されているようですがその跡に再度簡易ホームと駅名表示、そしてレールを敷いて何故か旧国鉄貨物車掌車の最高傑作、ヨ8000を配置して何となく雰囲気ができています。

 ヨ8000内も何となく泊まれそうな気がします。登場後貨物車掌合理化と実際に稼働したのはごく短期間、実は国鉄職員でもそんなに経験者が多くないのでは? そんなヨ8000内での一泊、興味ある方は頼んでみてはいかがでしょうか?

 ヨ8000の簡易ブレーキ越しにお日様を待って。

 登場。

 本日のはじまりはじまり。

 さてここで、駅舎時代のニオイの残る室内

 鉄道時代とライダーハウス時代との思い出でが詰まってます。

 新しく貼ったモノでしょうが、国鉄末期の道内路線時刻表。池北線とか天北線、興浜北南線とかATOKでさえ一発変換不可の路線名が目白押しで泣かせます。一度乗ってみたかった・・・。

 白々と明けた朝日が段々と強まり、昨夜先にお休みになっていた先達方が起き出してきました。お一方は早々に準備をしてさっさと出かけていきました。何でもこれから支笏湖を回って峠を攻めに行くそうです。すごいなぁー、純粋のライダーだなぁ−。
 で、その不純な方の僕は、他の先達がコーヒー飲ませてくれると云うことで飲ませてもらうことに。お互いシラフなので私も取り入り易いです。取り入ります。うひひ。
 取り入った代償に色々と道内のお話を。まあその気になれば簡単に住めると云うことですが、その気がその気なんですよね、問題は。だから凄く尊敬しますよ、道内在住の皆さん。怠け者の私には無理だなぁ、残念ながら。
 そして貴重な道内情報。「函館市民は他地域の道民から結構嫌われている」本当?どーして? やっぱどこでもなんかいろいろあるもんですねぇ。とりあえず、「道南はさっさとスルーしなさい」と貴重なアドバイス。聞かないけど参考にします。

 先達方は本日旅の最終日というわけでこれからのんびり地元まで帰ると云うことでスロースタートを決めてるそうです。私は昨日昼夕張メロンアイス、夜富良野牛乳アイスとまともな食事を2回も食い損ね、朝飯を食わねば多分事故るだろうと思ったので適当に支度ができたら出立することにしていたのでここで皆さんとお別れです。宿共々お世話になりました。
 で、敢えて自身に負の何かを科すという目的で泊まったライダーハウスでしたが、今回は割合成功のようです。成功か失敗かはやはり同宿者が取り入り易い気が合う人か否かによるのでしょう。それさえクリアできれば大変リーズナブルな宿泊施設ですのでどんどん利用を、と言うワケには行かないのだこのライダーハウスというお宿の難しい所で、実は宿泊者からの宿代で管理費用等まかなえることはほとんどなく、大抵が赤字状態で管理者さんの好意で続けている例がほとんどとのこと。冗談抜きで余裕のない北海道でこんなに余裕のあるお宿があることは大変嬉しい心意気なのですがな実は大変複雑なんですね。けどあるんだから利用しないより利用するに越したことはないとは思いますので、ご利用の際は節度を持って、「利用させていただく」位のお心持ちで。

 ライダーハウス旧萱野駅http://www.hatinosu.net/house/archives/372.php

 

*1:と言っても夕張市街から「お隣の市」の三笠市までシカクマ要注意の半無人野を車で30分ばかり走りますけど、北海道では普通!

*2:実際はクマが出そうな山中で迷いでもしない限り心細い思いなどしたことのない孤独に強い私です

*3:用途ちょっと違う